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15. ミックスする - Cubase

Mixing

[所要時間の目安:120分]
〔初回掲載(暫定公開): 2024.12.1、最終更新: 2024.12.1

いわゆる"2MIX"を作るためのミキシングを行います。 オケとボーカルをまぜてモニタリングしている時点ですでにある程度のミックスは行われているわけですが、ここでは鑑賞する音楽作品としての体裁を整えていきます。
打ち込みトラックもオーディオ化したうえでミックスするケースが多いと思いますが、このガイドではインストゥルメントトラックのままでミックスを行うことにします。


(1) 作業前の状況整理
    A. MixConsoleウィンドウ
    B. 音声の流れ
(2) 各トラックの音量と定位の調整
    A. どの部分を基準にするか?
    B. 音量調整
    C. 左右位置調整
(3) ドラムをバスにまとめてコンプレッサーに通す
(4) ストリングス、パッドなどをバスにまとめてEQで低域をカットする
(5) エフェクトセンド用のFXチャンネルトラックを作り、各トラックからの送り量を個別に調整する
(6) モノラルのボーカルに空間系エフェクトを掛ける
(7) ステレオトラックを聴感的にモノラルにするには
(8) 全体をコンプレッサーに通す
(9) リファレンス音源との比較
(10) 設定結果
(11) ここまでで使った機能のまとめ

Cubase 13 から変更されていない画面については「Cubase 13 操作ガイド」の画像を流用しています。



(1) 作業前の状況整理

実際には打ち込みが終わった段階で各トラックの音量や定位(左右位置)の設定はある程度は済んでいると思います。
エフェクトプラグインも刺さっているかもしれませんが、本ガイドの展開上、まだなにも刺さっていないことを想定することにします。

なお、ミキシングに先立ち不要なトラックは隠しておきます。

  • Visibility①のチェックを外すと②非表示にできます
プロジェクトウィンドウ


A. MixConsoleウィンドウ

MixConsoleも同様に不要なトラックを隠しておきます。

  • スタジオメニューからMixConsoleを開きます①。[F3]キーでも開閉できます
  • Visibility②のェックを外すと③非表示にできます
MixConsole


B. 音声の流れ

この時点での音声の流れを示します

音性の流れ


【関連情報】

(2) 各トラックの音量と定位の調整

A. どの部分を基準にするか?

このガイドでは曲のなかで一番音量が上がるところ、なるべくたくさんのトラックが鳴ってるところを基準にして各種の設定を行います。
各種設定は画面はチャンネル設定、MixConsole(下ゾーン、ウィンドウ)、インスペクターの左の「チャンネル」のいずれでも可能ですが、ここでは基本的にはチャンネル設定で行うことにします。

  • トラック(キック)を選択し①、インスペクターのトラック名右隣の[e]②でチャンネル設定を開きます
  • 周波数分布(スペクトラム)がわかりやすいようにEQ③を選んでおきます
  • 本ガイドではチャンネルストリップ④は使わないこととします
チャンネル設定


B. 音量調整

トラックの音量をどう設定するかは難しい問題です。「キックを-10dbに設定する」という考え方があるようなのでこのガイドでもそれにならうことにします。

  • プロジェクトを再生しながらレベルメーターのピークを見ます①
  • ピークがおよそ-10dBになるようにフェーダーを調整します②
  • ピーク値①はホールドされたままになるのでフェーダーを動かす都度クリックしてリセットします
音量調整:キック


つぎはベースのレベルを調整します。これは数値ではなくキックの音量を基準にして耳で判断してフェーダーを調整します。

  • キックを聴きながらベースの音量を調整します①
  • なお、操作の過程でチャンネル設定パネルがいちいち隠れて操作しにくい場合は適当な余白を右クリックして②「常に前面に表示」③にチェックを入れておきます
音量調整:ベース


  • 残りのトラックの音量を調整していきます①②
  • フェーダーで調整しきれない場合はプリゲイン③を併用することもできます
音量調整:スネア


画像は全トラックのボリューム調整を終えた状態です。

音量調整:全体


C. 左右位置調整

次に音像の左右位置(パン)を調整していきます。

  • 画像はタンバリン①を左に寄せた状態です②
タンバリン


HALion Sonic の出力は基本的にはステレオです。ステレオトラックの音像を自由に左右位置に配置するためにはパンのモードをステレオコンバインパンナー (Stereo Combined Panner)に切り替えます。
デフォルトはステレオバランスパンナー (Stereo Balance Panner)です。

  • トラックを選びます①
  • パンのところを右クリック②してステレオコンバインパンナー③を選びます
コンバインパン


画像は全トラックのパン調整を終えた状態です。

パン全体


【関連情報】

(3) ドラムをバスにまとめてコンプレッサーに通す

「ドラムはバスにまとめてコンプレッサーなどを掛けるとまとまりが出る」という意見があるようです。
このガイドでもそれを踏襲してみます。

ここでは音声の流れを下図のように変更します。

音性の流れ


  • ドラムのトラックを選択状態にします①
    ([Ctrl]まはた[Shift]を押しながらクリックすると複数選択できます)
  • 任意のトラック上で右クリック②して「選択チャンネルにグループチャンネル..」を選びます③④
  • グループ名は「@DRUMS」にしておきます⑤
ドラムグループ


  • @DRUMSのインサートスロット①にCompressor②を挿します
  • Compressor③のパラメータを設定します
ドラムグループにコンプレッサーを挿す


(4) ストリングス、パッドなどをバスにまとめてEQで低域をカットする

ドラムと同様にストリングス、パッド系のトラックをグループにまとめてます。ここではEQを挿してみます。

ここでは音声の流れを下図のように変更します。

音性の流れ


  • ストリングス、パッド系のトラックを選択状態にします①
    ([Ctrl]まはた[Shift]を押しながらクリックすると複数選択できます)
  • 任意のトラック上で右クリック②して「選択チャンネルにグループチャンネル..」を選びます③④
  • グループ名は「@STRINGS」にしておきます⑤
ストリングスグループ


  • @STRINGSのインサートスロット①にStudioEQ②を挿します
  • 他のトラックの音がうるさい場合はSoloボタンで@STRINGSを単独で鳴らせます②
  • StudioEQ③のパラメータを設定します
ストリングスにEQを挿す


(5) エフェクトセンド用のFXチャンネルトラックを作り、各トラックからの送り量を個別に調整する

一部のトラックにセンドでリバーブ掛けてみます。

ここでは音声の流れを下図のように変更します。

音性の流れ


  • リバーブを掛けたいトラックを選択します①
  • 任意のトラック上で右クリック②して「選択チャンネルにFXチャンネル..」を選びます③④
  • チャンネル名は「FX@ROOM」としておきます⑤
FXチャンネルトラックを作る


  • FX@ROOMのインサートスロット①にRoomWorksを挿します
  • RoomWorksの「WET ONLY」を必ずオンにします②
FXチャンネルトラックを作る


リバーブの掛かり方は楽器によって変わってきます。そのため多くの場合、トラックごとに送り量を調整する必要があります。

  • MixConsoleを開きます
  • Sendsが閉じている場合はクリックして展開します①
  • トラック毎に送り量を調整します②
センド量調整


(6) モノラルのボーカルに空間系エフェクトを掛ける

ここではモノラルトラックにステレオ空間系エフェクトをインサートしてみます。

  • ボーカルトラックを選択してチャンネル設定を開きます①
  • インサートスロットにエフェクターを挿します②
  • 試行錯誤の結果、Vocal Chainを使用することにします③
  • Vocal Chainはステレオの空間効果を含みますが、このボーカルトラックはモノラルなので音像は左右に広がりません
  • [〇]④はモノラルであることを示します。これ④をクリックすると波形はそのままにチャンネルだけをステレオに変更できます⑤
  • 変更後はステレオを示す[〇〇]に変わります
ボーカルに空間系エフェクトを掛ける


(7) ステレオトラックを聴感的にモノラルにするには

HALion Sonic の出力は基本的にはステレオです。オーディオトラックの場合は前節の方法で簡単にステレオ→モノラル変換ができますが、この機能はインストゥルメントトラックでは使えません。
そこでステレオトラックの左右広がりを調整する方法をひとつ紹介します。StereoEnhancerを使う方法です。

  • モノラル(横に広がりがなく、中央に定位する)で聴こえるようにしたいトラックにStereoEnhancerを挿します①
  • 初期状態①では聴感的な変化はありません
  • リング部分③を絞ると左右の広がりが狭まります(逆に回すと広がりが出ます)
  • %表示の下の[MONO]をオン④にすると%の表示に関わらず聞こえ方がモノラルになります
聴感的にモノラルにする


【関連情報】

(8) 全体をコンプレッサーに通す

作成したトラック全体にコンプレッサーなどを挿したい場合、Stereo Outに挿すと読みこんだインストや耳コピ元音源にもかかってしまいます。
そこでここでは打ち込みトラックや録音したボーカルをStereo Outに出力する前に一つグループを挟み、そこにコンプレッサーを挿すことにします。

ここでは音声の流れを下図のように変更します。

音性の流れ


  • MixConsoleを開き"Stereo Out"に出力しているトラックを選択状態します①
  • 二つ目以降は[Ctrl]を押しながらクリック②すると複数選択できます
トラック選択


  • プロジェクト画面に戻ります
  • 選択されているトラック①の上で右クリックしてグループチャンネルトラックを作成します②
  • 名前は"@MIX"③とします
グループチャンネルトラックを追加


  • @MIXのインサートスロットに"Compressor"を挿します①②
コンンプレッサーを挿す


(9) リファレンス音源との比較

耳コピをしている場合は、本物に似せるために元音源とスペクトラムを比較したい場合があります。Cubaseは自トラックと別のトラックのスペクトラムを重ねて表示できます。

  • @MIXを選び①チャンネル設定を開きます
  • ②をクリックして元音源のトラックを選びます②③
  • スペクトラムが重ねて表示されるので④、必要に応じてEQで周波数成分を調整します⑤
スぺクトラム比較


【関連情報】

(10) 設定結果

最後にこの章での設定結果を示しておきます。
実際にはもっとたくさんのプラグインを挿すことになると思います。

MixConsoleのインサートスロット


MixConsoleのセンド


音声の流れを示します。

音性の流れ